米・ロサンジェルスのジョン・ポール・ゲティ美術館は、偉大なる芸術巨匠たちによる16の素描画と19世紀の絵画が、コレクションに加わることを明らかにした。

ゲティ美術館取締役のティモシー・ポッツ氏によると、それら作品の入手のために、創設以来の最高額を投じたようだ。

1億ドルを超える作品たち

ポッツ氏は具体的な金額については触れなかったが、今回入手した作品のうち数点の取引記録から判断して、ゲティ美術館の買い物は軽く1億ドルに上るだろう。

全ての作品をイギリスの個人のコレクションから入手したというが、その名は明かされていない。作品を手掛けた巨匠たちは、ミケランジェロ、パルミジャニーノ、ジョアン・アントワーヌ・ヴァトー、ロレンツォ、ディ・クレディ、アンドレア・デル・サルト、ルーベンス、バロッチ、ゴヤ、ドガなどである。

ミケランジェロの「Study of a Mourning Woman(1500〜05頃)」を筆頭に、アンドレア・デル・サルトの「Study for the Head of St. Joseph(1526〜27頃)」、パルミジャニーノの「The Head of a Young Man(1539〜40頃)」、ゴヤの「The Eagle Hunter(1812〜20頃)」、ドガのパステル画「After the Bath(Woman Drying Herself、1886)」などの偉大なる巨匠たちの作品が名を連ねている。

ジャン・アントワーヌ・ヴァトー《驚き》も発見

今回ゲティ美術館が購入したもののうち唯一の油彩画は、ロココ時代前半に活躍したジャン・アントワーヌ・ヴァトーの《驚き》(1718頃)で、この作品は2008年まで150年以上も行方不明とされていた。

およそ35センチ四方のパネル画で、大きくはないが、広く知られるこの作品が描かれたのは、作者が36歳という若さで死を遂げる3年ほど前だったという。

コメディア・デッラルテという即興演劇で、登場人物が、大胆に抱き合う男女のそばでギターのチューニングをしている様子が描かれている。

《驚き》は、今回のゲティ美術館による大規模な購入の中でも、最も注目度の高い作品だ。行方不明とされていた間は、英国バッキンガム宮殿の王立コレクションにあったコピーでしか知られておらず、しかも白黒の版画であった。

ポッツ氏によると、「La Surprise」が収蔵品に加わることは、絵画部門で最良の出来事で、その失われたとされていた傑作が10年前にイギリスで見つかったことは本当に嬉しい驚きだったという。

この作品は、6年前に一時輸出許可が下りず、保留状態となっていた。英国が重要な美術品を国外に流失させないようにする傾向にあるためだが、ゲティ美術館広報によると、保留は解かれているという。

最高峰の巨匠たちの素描画

他にも、ゲティ美術館が入手したというミケランジェロの「Study of a Mourning Woman」は、彫刻のように表現されたローブを見に纏った女性が、嘆きに体をうつ向かせる様子が描かれている。

この素描画は、2000年にイギリスのヨーク市北部にあるキャッスル・ハワード図書館の本に挟まっていたところを発見されたことで有名である。

アンドレア・デル・サルトの「Study for the Head of St. Joseph」は、赤と黒のチョークで力強く描かれており、2005年のスイスコレクションでは850万米ドルで売却されていた。

パルミジャニーノの「The Head of a Young Man」は、2001年のフィラデルフィアコレクションで突如姿を現した。ハッチングや点描の技法を巧みに生かして描かれた若者の顔は、堂々としており、完全に正面を向いてはいるが、目は上を向いている。まるで見えない何かが頭上をホバリングしているのを見ているかのようだ。

ゴヤの「The Eagle Hunter」は、崖に吊るされた男と狩りをする鷲の図で野性味に溢れており、また、ドガのパステル画「After the Bath」は、パノラマ的で入浴後に体を拭く女性の図を表している。

意義深い作品たち

ゲティ美術館の上級学芸員のジュリアン・ブルック氏は「どの作品も大変素晴らしく、ゲティ美術館にとってこれらの作品を入手できたことは大変意義深いものである」と、述べている。

ポッツ氏もまた「美術館にとって変革的な機会」だと語っており、「これまでこのようなチャンスはなかったし、これからもないだろう」と付け加えた。

購入した作品のほとんどはゲティ美術館に渡っているが、イギリスからの輸入許可を待つものも何点か残っている。「もし輸入が滞ったとしても、ただ遅れるだけで済むことを切に願っている」とポッツ氏は述べた。

ゲティ美術館では新たな作品の入手についての発表を予定しているが、日時は未定である。

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