アメリカのバージニア州ウィリアムズバーグにあるウィリアム・アンド・メアリー大学は、印象派画家として有名なポール・セザンヌの練習絵が発見されたと発表した。大学の発表によると、この模写は1860年代に描かれたものであると考えられている。

ルネサンスの画家・ティントレットの模写

セザンヌが模写した作品と考えられているのは、イタリアのルネサンス期の画家ティントレット(本名:ヤコポ・コミン)の作品《奴隷の奇蹟》である。本作品は1548年頃に、ヴェネツィアの同信会館であるスコーラ・グランデ・ディ・サン・マルコに飾るために描かれた油絵で、ティントレットの代表作とも言われている。

415×541センチメートルの広大なキャンバスには、地面に横たわるプロヴァンスの騎士の召使と囲むようにしてじっと彼を見る人々、拷問具を持ち上げる執行人、そして自身の信者を救済するために空から舞い降りた福音書記者の一人聖マルコが描かれている。プロセニアム・アーチ形式の舞台上で起こったその奇跡的な様子が、作品の主題とされている。

写実性の高いティントレット作品とセザンヌ

こうしたストーリー展開に加え、《奴隷の奇蹟》は表現における技術的な面でも特徴がある。まず、絵画の構成が細部にまで及んでおり、人物の姿は大胆な程に短縮法を用いることで一般的な遠近法を超えた立体さを実現している。さらに、光と影のコントラストがはっきりとされていることで写実性が非常に優れている。

このような詳細にわたる描写が特徴的なティントレットの傑作を、遠近を重視しない作風のセザンヌが描いたことが最も注目すべき点だが、同市の美術館でキュレーターを勤めるジョン・スパイク氏は、セザンヌの《奴隷の奇蹟》に対し、「粗い塗料を用いて描かれた無謀とも取られられる作風」だと鑑定している。

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