先日、MUSEYでは「ラファエロ展、開催!天才・ラファエロの知られざる9つの真実」という記事をお送りした。

しかし、そのなかに衝撃的な一文があった。

ラファエロの死因は、マルガリータ・ルティとの過度な情事が原因で熱病に罹患したものの、体調を崩した理由を主治医に説明しなかったため

過度な情事…過度な情事….。お…おう。

多くの人が、この文章に目を疑ったことだろう。これは本当なのだろうか?あの天才・ラファエロともあろう人間が、そんなことで死んでしまって良いのだろうか?

MUSEY編集部は、早速調査を開始することにした。

この話の出所

これは、一体誰が言い出したのだろうか?大体、過度な情事で死んだ、などと記録が残っているものなのか?後世のねたみや、あるいは単なる噂話では無いだろうか。調べをすすめていくと、ルネサンス期の画家について書かれた第一級の史料が存在することが明らかになった。

それが16世紀のイタリア人ジョルジョ・ヴァザーリによって記された『画家・彫刻家・建築家列伝』だ。この本は、「芸術文学の古典としてもっとも有名で、もっとも研究された本」であると呼ばれ、ルネサンス芸術を研究する上で貴重な史料とされている。

この本は、誤った日時、場所が記されていたり、完全なるつくり話も挿入されていることから、現在でも内容の真偽を確認する作業がおこなわれているが、それでも貴重な史料であることは確かなのだ。

絶賛されるラファエロ

そして、なんとこの本は翻訳があり、簡単に手に取ることが出来る。さっそく、MUSEY編集部ではこの史料を読んでみた。ここにラファエロの死因についての手掛かりはあるのだろうか?

まず、ラファエロの項目はこのように始まっている。

普通ならば、長い時期にわたって、天が多くの人々に分ち授けるであろう世にも稀な才能やもろもろの美質や限りない宝の数々を、天は時に一人の人間に存分に惜しみなく授けることがある。(p165)

べ…べた褒めやん!

ということで、著者のヴァザーリは、ラファエロを高く評価している様だ。彼がラファエロを恨んで適当なことを書くという可能性はなさそうだ。

ラファエロの放蕩

ラファエロについての記述は、えんえんと続く。基本的に、彼の芸術について絶賛され続ける。一体、彼の死については語られるのだろうか?

すると、こんな一文が目に入ってきた。

その間もラファエロはひそかに女遊びを続け、度を超した放蕩に耽っていた(p208)

おお!きたーーーーーーー!

ここで述べられる「その間」とは、ラファエロが友人の枢機卿からすすめられた結婚を断りきれずに、その姪と婚約してしまった間だそうです。

婚約者がいるのに「度を超した放蕩に耽る」。

ラファエロさん…!!!

ラファエロの死

そして、いよいよ次にこんな記述が!

そしてあるとき、ふだんにもまして不節制の度を過ごしたために、帰宅するや高熱を発した。ラファエロが放蕩についてはなにも打ち明けなかったので、医師たちは彼が熱に当てられたものと勘違いし、不注意にも瀉血した。すると瀉血のためにラファエロは衰弱し、ついに自分の命が尽きていくことが感じられた。(p208)

ちなみに瀉血(しゃけつ)とは、人体の血液を外部に排出させることで症状の改善を求める治療法で、中世ヨーロッパで広く行われてた。医学的根拠はほとんどの場合は無く、迷信による治療であった。

なんということだ!やはりラファエロは、度を超した放蕩によって死亡したようだ!著者ヴァザーリは、そのあとの一文でこのように書いている。

彼は本当は強壮剤を必要としていたのである

ヴァザーリは、これを狙って書いたのだろうか・・・。いずれにしても、ラファエロは、やはり「激しい情事」で亡くなった可能性が強い様だ。

ちなみに

ちなみに『画家・彫刻家・建築家列伝』は、読み物としてメチャメチャ面白い。ヴァザーリは、ラファエロのもっとも評価する部分として以下の様に書いている。

彼が有した得意な天賦の才の中で、私をとくに驚かせた偉才というべきものは、われらの絵画芸術においてわれわれ画家の体質と全く異なる効果を発揮し得る力を天が彼に与え給うたことである。それは何かといえば、画工たちがラファエロと一緒に仕事をすると、みな気分が一致しておたがいが円満に調和し、愉快に働いた、ということである。

このエピソードは、決して天才というのが孤独であり、常人からは理解されないものだと言う固定観念を壊してくれるものではないだろうか?他にも、彼の優れた文才は、ルネサンス期の芸術家を生き生きと描いている。

また、前述した様に『画家・彫刻家・建築家列伝』にあるエピソードの真偽は、不確かなものも多い。実際にラファエロの死因について、最新の研究を知っている人はぜひ教えてほしい。

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