作品概要

鍛冶屋》は、画家のフランシスコ・デ・ゴヤによって描かれた作品。制作年は1817年から1817年で、フリッツ・コレクションに所蔵されている。

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『鍛冶屋』は、1817年頃にスペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが製作した油絵であり、現在はニューヨーク市の美術館フリック・コレクションに所蔵される。大きなカンバスには、3人の鍛冶屋が金床を打っている姿が描かれている。美術歴史家のフレド・リヒトは、この作品が「ゴヤの後期のスタイルを最も完璧に表わしている」とした。

物語性が欠落したこの絵画は、写真のようにある一瞬を捉えて描きだされたものだ。舞台となる場所ははっきりとせず、ここでは灰色、青、黒、熱した鉄の鮮やかな赤色によって強調された色彩の組み合わせが研究されている。この構成に登場人物たちの躍動的な動作がつけ足されることで全体の調和が生みだされている。

ゴヤの『鍛冶屋』では、力強い太い腕、重い筋肉がついた背中といったような古典的な英雄の描写に見られる男らしさが強調される。一方で、鍛冶屋の男たちの顔からはその粗野な気性が読みとれ、彼らが英雄ではなく平民であることを示唆する。登場人物達は、19世紀スペインの未来を金床でつくりだす労働者階級である。本作品は、フランスのナポレオンという脅威に抵抗するイメージを喚起する1808年の作品『ナイフの研ぎ師』と同じ系列に属しており、また憲法の草稿制作への民衆の参加について言及している可能性もある。宮廷画家でありながら、ゴヤは生涯を通して平民が置かれた苦境に意識を向けていた。ゴヤはしばしばしば彼らの労働の尊さや戦争によってもたらされる苦しみを強調しながら、その日常生活の様子を描いていた。

ほかにも『鍛冶屋』にはさまざまな意味づけがなされている。美術歴史家のジャニス・トムリンソンは、絵画に登場する老人は若い妻に欺かれた神ヴァルカン(ヘイパートス)に言及したものではないかと記している。もしこの説が正しいとなると、『鍛冶屋』はゴヤのほかの2作品と同じテーマで結びついた連作の可能性も出てくる。『若者たち』、『ご機嫌いかが?』はそれぞれ女性の無節操を描いているからだ。さらには、「古典を出所とするヒントはどこにもない」と認めながらも、美術歴史家マイケル・フリードは「後ろ姿で描かれた画面近くに立つ作業員が力強く突きだす腰の動き、作業員全員が赤く熱した鉄に全神経を集中させている様子からは」性的な仄めかしが読みとれるとしている。

1817年頃に描かれたスケッチ作品『穴を掘る男たち』が、本作の前段階の作品だった可能性もある。両作品の正確な制作年月は定かでないにせよ、「黒い絵」シリーズに見られるスタイルとの類似性から、おそらく1815年から1820年の間には制作が完了していたと推定される。『鍛冶屋』は視点が低めの位置に設定され、人物たちの姿がより堂々とした様子で鑑賞者の目に映る効果を生んでいる。スケッチ版とは異なり、『鍛冶屋』ではふたりの男たちの顔が露わにされている。またスケッチ版では農具で穴を掘る行為が描写されているのに対して、本作においては金床にすべての動作が集中している。両作品は背景が定かでなく、3人の男たちが不自然なほどに近い距離感で配置されていることから、現実というよりはむしろ抽象的な光景を描いたものとして見なすこともできる。

ゴヤが数多く描いたスペインの普通の人々の肖像画がそうであったように、本作品は画家の極めて私的な作品で、その存命中に人目に触れることはなかった。彼の死に際して所有権が息子に移った後、フランス国王ルイ・フィリップにルーブル美術館のスペイン・ギャラリーのコレクションに加えられ、イングランドに渡るまでの1838年から1851年の間そこで展示されていた。1853年にはロンドンの競売会社クリスティーズで売却、最終的にフリック・コレクションが購入する次第となった。

《鍛冶屋》の基本情報

  • 制作者:フランシスコ・デ・ゴヤ
  • 作品名:鍛冶屋
  • 制作年:1817年-1817年
  • 製作国:不明
  • 所蔵:フリッツ・コレクション
  • 種類:油絵
  • 高さ:181.6cm
  • 横幅:125cm
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