作品概要

精神病院の中庭》は、画家のフランシスコ・デ・ゴヤによって描かれた作品。制作年は1794年から1794年で、メドウズ美術館に所蔵されている。

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『精神病院の中庭』(スペイン名:Corral de locos)はスペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが1793年から1794年の間にちいさなブリキ板に描いた油絵である。ゴヤはこの絵画について、若い頃にサラゴーザで目撃した施設の光景が元になっていると言及している。

『精神病院の中庭』が描かれたのはゴヤの聴力が衰え、精神病に対する恐怖が悪化していく中で、以前にも増して健康状態について不満を訴えていた頃だった。同時期に書かれた診断書には「頭の中の雑音と聴力は改善していないが、視力はずいぶんと良くなり、平衡感覚をとり戻している」と書かれている。

この時期のゴヤは王家や貴族に依頼された肖像画の制作に没頭していたが、同時に自らの暗い想像から本作のような私的な小品を描いていた。これは、ゴヤが1790年代半ばに描いたキャビネット・ペインティングの初期の作品にあたる。ゴヤはキャビネット・ペインティングにおいて理想の美を求めて自然主義とファンタジーの関係を探っており、この実験がその後の彼の画家としてのキャリアの基になった。

心身の衰弱と長引く病に侵され、この絵のシリーズは自己懐疑、不安、そして狂気に対する恐怖が反映されているとゴヤは語った。シリーズの作品は「自らの苦痛に対する熟慮によって苦しめられた想像力」を表わす役割を果たしており、「依頼されて描いた作品群の中には通常見つからない」特徴があるという。

美術研究家のアーサー・ダントは、『精神病院の中庭』はゴヤの画家としてのキャリアの「幾ばくの陰も無い世界から幾ばくの光もない世界」への転換を示すとした。本作品はより成熟した筆で描かれてはいるが、同じように陰鬱な1812年から1819年に制作された作品『精神病院』としばしば比較される。これは「人間の理性を無くした人間の肉体からなる陰鬱な光景」であり、ゴヤの「苦痛とサディズムからなる非常に不愉快な光景」のひとつで、彼が注文肖像画家から自らの陰鬱と人間性に対する容赦ないまなざしのみを探求する画家に進化したことを示す作品である。

ある歴史家たちは、ゴヤが悩まされたウイルス性脳炎と耳鳴り、平衡失調、聴力の衰えはメニエール病の症状ではないかと推測している。ほかには彼が精神病に苦しんでいたという主張もある。しかしながら、これらの画家の死後に行われる診断の試みは推測の域を出ず、その病名は不明のままとなっている。わかっていることは、彼が自らの気が狂うのではないかと恐れながら生きていたこと、そしてその恐怖と絶望を自らの作品に投影したことである。

狂人収容所(当時の精神病院にあたる)を舞台として想定した『精神病院の中庭』が描かれたのは、美術評論家のロバート・ヒューズの言葉によれば、そうした施設が以下のような場所にしかすぎない時代だった。これらの施設は「社会の表面に空いた複数の穴であり、ちいさなごみ捨て場である。

そこに精神病患者たちは、患者たちの病の本質を明らかにし、分類わけを行ない、または治療するというもっともちいさな試みもなされずに放り込まれる可能性があった」。ゴヤが描いた庭は殺風景で、枷を嵌められた被収容者たちは高い壁と重い石づくりのアーチ型の門に取り囲まれている。被収容者たちは喧嘩をし、にやにやと愚かそうな笑みを浮かべ、あるいは絶望の内に身を縮めている。彼らは全員気の滅入るような灰色と緑の光に照らされ、たったひとりの男が彼らの番を務めている。この作品に描写されているのは、孤独、社会的疎外感、ホガースのような以前の画家たちの作品における精神病に対する表面的な治療への決別を表わす、身の毛のよだつような架空の光景である。

1794年に友人ベルナルド・デ・イリアルテに宛てた手紙で、彼は、この絵画が描いているのは「狂人たちが居る中庭で、喧嘩をしているふたりの全裸の男たちを監視人が打っており、ほかの者たちはゆったりとした服を着ている(これは私がザラゴザで目撃した光景だ)」と記述した。これは当時普及していた精神病患者に対する非常に厳しい治療法に対する非難として一般に解釈されている。精神病患者たちは犯罪人たちと共に監禁され、鉄の枷を嵌められ、定期的に肉体的処罰に晒される場所に居た。

石レンガの壁と鉄門の内側に閉じこめられた患者たちはじっとある一点を見つめていたり、座ったり、ポーズをとったり、とっ組みあったり、しかめ面をしたりするか、あるいは自分たちを折檻している。カンバスの最上部は太陽の光に掻き消され、下部で繰り広げられる悪夢のような光景を強調している。啓蒙主義のきわめて重要な目的のひとつは刑務所や収容所の改革であり、そのほかの囚人・犯罪人あるいは精神病者に対する残虐な扱いに対する非難は、ゴヤによる後の多くの絵画の題材ともなった。

この絵画は1922年に売却されてから一般の目には触れずにいたが、1967年にアルガー・H・メドウに寄贈され、現在はダラスのメドウズ美術館に所蔵されている。

《精神病院の中庭》の基本情報

  • 制作者:フランシスコ・デ・ゴヤ
  • 作品名:精神病院の中庭
  • 制作年:1794年-1794年
  • 製作国:不明
  • 所蔵:メドウズ美術館
  • 種類:油絵
  • 高さ:32.7cm
  • 横幅:43.8cm
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